国立大学法人等との意見交換の概要

国立大学法人等のニーズや課題等を把握し、今後の施設整備の在り方についての検討に資するため、10月8日~12月11日までの間、各国立大学法人等の財務・施設担当理事等(74国立大学法人、4共同利用機関法人、高等専門学校機構)と意見交換を実施した。以下、意見の主なポイントをまとめた。

老朽再生整備と狭隘解消整備

 ・施設の耐震化については、Is値0.3未満のものについては目途が立っている状況であるが、大半の大学が老朽施設の解消を重要かつ優先的な課題と認識。
 ・特に、耐震性は悪くないが老朽化している施設の整備や維持管理、基幹環境整備が課題であると考える大学が多く、
   ・機能劣化により教育研究に支障が生じている。
   ・国による支援が耐震補強に限定されており、自己資金が十分にないために機能改善まで十分に進められていない。
   ・キャンパス移転等により建物を一斉に整備したために、いずれ集中的に建物の機能劣化が進むことから、計画的な改修が必要である。
   ・適時に手を入れれば長く使うことができ、中長期的な経費が安く上がることから、投資的効果を考えても定期的に維持管理を行う必要がある。
   ・次の5か年計画では、耐震性の高い老朽施設の再生整備を重点化してほしい。
  といった意見があった。
 ・一方、外部資金を活用したプロジェクトを実施している大学等では、
   ・ポスドク・非常勤職員の増加に対応するスペースが不足している。
   ・欧米から優れた研究者を招きたいが外国人研究者のスペースが課題。
   ・大学院の充実による学習スペース、共同研究や産学連携を進めるための実験室等が不足している。
   ・イノベーションの活動が活発になっていることもあり、総合研究棟や実験系のスペースが足りていない。
  など、施設の狭隘化の解消も課題とする意見もあった。
 ・このほか、国の補助金による安定的な予算が確保されないため、計画的なキャンパス整備が図れないとの意見もあった。

学生支援のための施設への対応

 ・教育研究施設以外の学生宿舎、トイレ、図書館、学生会館など学生支援のための建物の整備については、
   ・学生支援のための空間を整備すると学生に喜ばれることから、学生へのサービス向上、入学者の確保という観点からも重要な課題である。
   ・教育研究のための建物がどうしても優先されるため、学生支援のための施設整備が遅れている。
   ・私学と優秀な人材を取り合うためには、福利厚生施設の充実が必要。
   ・キャンパスの景観や学生のたまり場となる憩いの空間を整備したい。
  といった意見があった。
 ・中でも、学生宿舎の整備に対する支援を求める声が多く、
   ・学生宿舎の老朽化が著しく、戸数も不足している。
   ・地方では、家賃を高く設定することは困難であり、借上できる建物も周辺にないことから、長期借入や民間借上だけでなく国による支援もお願いしたい。
   ・高専においては、学生寮は全人教育や自学自習の場として重要な施設。学生寮が学生の学力向上に貢献している。
  といった意見があった。

政策的課題への対応

 ・国際競争力のある研究や産学連携、法科大学院、留学生30万人計画、医師不足対策、環境への配慮など国の推進する政策に対応するためには、そのための環境整備が不可欠。現状では、必要な環境整備が追いついていないとの声が多い。
 ・特に、留学生30万人計画への対応、医学部定員増への対応、環境への配慮等については、課題と考えている大学が多く、
   ・留学生対応については、生活環境である留学生宿舎が必要であり、現在の学生宿舎を混住型に改善して対応している。
   ・留学生への高い寮費の設定は困難であり、長期借入だけでなく国費による支援をお願いしたい。
   ・医学部定員増については、定員増に伴うスペースの確保が課題
   ・環境対策については、更に省エネを徹底するために空調・照明等のインフラ機器の更新・整備が必要。
   ・教員免許更新制については、研修等に対応できるスペースが必要だが、周囲の大学等と連携し概ね対応できる。
  といった意見があった。

産学官連携・地域貢献を進める上での課題

 ・産学官連携、地域貢献・社会貢献を大学の中期目標として掲げている大学もあり、企業・地域との連携を一層進めていくために施設設備の整備を求める声もある。
 ・地元企業や自治体との連携を進めている大学が多く、教育・研究面だけでなく、施設整備の手法として、企業や自治体からの寄附等を得ている大学も見られた。
 ・一方、産学官連携、企業の寄附講座等へのニーズが高いものの、
   ・対応できるスペースが不足している
   ・機密管理の徹底が十分でない
   ・クリーンルームや電磁波遮断など施設への要求レベルが高い
  など、連携していく上で施設面での課題があるといった意見があった。
 ・また、地域貢献を進める上でも、スペースの不足や安全管理面での課題があるといった意見があった。

大学における財源創出に向けた課題

 ・法人化により外部資金の調達等ができるようになり、各大学において様々な手法により施設整備を進めている状況。一方、
   ・外部資金を活用した整備に努力しているが、大学の自助努力に対して何らかのインセンティブがほしい。
   ・地方の大学では、目的積立金が少なく施設整備に回せる予算が確保できない。周囲に大企業がなく中小企業ばかりで外部資金の獲得が困難
   ・都市部と地方の大学との格差を考慮していただきたい。
  といった意見があった。

法人化によるメリット・デメリット

 ・法人化によるメリットとして、
   ・大学の関係者の経営感覚が浸透してきており施設に対する意識が高まった
   ・寄付金や目的積立金、民間金融機関からの借入金を活用した施設整備など、予算確保の手段が広がり様々な形で財源創出が可能となった、
   ・学長の裁量範囲が拡大され施設整備の自由度が高まった
  といった意見があった。
 ・一方、法人化によるデメリットとして、
   ・運営費交付金の削減により財源の捻出が厳しくなった
   ・施設系職員の定員が削られ体制が厳しくなった
   ・施設整備費補助金となり手続きが煩雑で事務の量が増大した
   ・補助金の使い勝手が悪く、柔軟で使い勝手のよい仕組みにしてもらいたい、
  といった意見があった。

教育研究環境整備による効果

 ・教育研究環境整備による効果について、教育研究における効果を定量的に示すことは困難であるものの、実感として、
   ・学生が集まり活気づいた
   ・教育研究環境が充実して学生等が満足している
   ・建物に対する苦情がなくなり、志願者が増加した
   ・患者のアメニティ、スタッフの働きやすさが改善された、
   ・少人数のセミナー形式で学習できる環境が整備されたことにより学生のモチベーションが高まっている
  といった意見があった。

人的体制面での課題

 ・多くの大学において、学長や教員から施設系部署への評価が高い一方で、
   ・法人化により技術系職員が不足しており事業の対応が困難、
   ・技術系職員の能力・スキルの向上のためにも研修を行う必要があるが、研修に人を出す余裕がない研修の機会がない
   ・補助金適正化法や改正建築基準法の対応、総合評価、施設の一元管理、各種実態調査への対応など膨大な業務があり、職員の負担が増加している
   ・新たな技術系職員の採用が難しい
   ・地方や単科大学など小さな大学においては施設担当スタッフが少なく、大きな大学との連携もうまくいかない、
   ・高専においては1高専2名の技術系職員で日常的な施設管理をしながら事業を実施しなければならず、宮城、高松からのサポートにも限界があり、きめ細かな対応ができない
  といった意見があり、人的体制面での課題を抱えている状況がある。

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大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室

(大臣官房文教施設企画部計画課整備計画室)

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